就活より大切なこと
2005年3月19日小学校からの親友が、流産した。
私の友達の中では一番古い友達である。出会ったのが七歳の時だから、かれこれ15年の付き合いだ。
彼女とは中学校まで一緒でその後別々の高校に進み、私は浪人→大学、彼女は高校卒業→フリーターという別々の人生を歩んでいたけど、ずっと仲良くしてきた。
小学校の時はどちらかの家でファミコン(そうだ、当時はファミコンだった。)をするか漫画を描くかだったけど、今では会うのは必ずといっていいほど飲み屋。
歳をとったものである。
そんな彼女から妊娠の事実を聞かされたのは、つい先月のことだ。相手は埼玉在住の年下クン。高校中退、ギャンブル大好き、タバコ大好きのとんでもない奴だ。三高ではなく、三低である。
そしてそれだけではない。
奴は、無職。
フリーターではない。正真正銘、なにがなんでも、筋金入りの無職である。っていうか、最近大流行中のニートである。
私は妊娠の知らせを受けたとき、軽く目眩を覚えた。
彼女がニートくんと付き合い始めたのは二年半位前で、その当時から私は彼のことが気にくわなかった。誤解されては困るが、私は彼の無職という肩書きがムカつくのではない。無職なのに親の金でパチンコに行ったり、彼女の金でラブホに一週間も泊まり続けたりする腐りきった根性だ。
最初、彼女は「彼、整備士になりたいみたいなの。自動車とかの。でもね、なかなか見つからないんだって。」と言っていた。私は整備士志望ではないのでよく知らないが、ふーんなかなか難しいのかぁ程度に認識していた。
そこで私は「じゃあ整備士の口が見つかるまでコンビニでバイトでもすれば?」と提案したところ、
「面接とか受けてるみたいなんだけど…見つからないみたい。埼玉、田舎だから。」と返された。
しかしね。
付き合い始めてから二年半、ずっと見つからないってのはどういうことなの?二年半コンビニのバイトの面接を受け続けて落ち続けてるとも思えない。これはやはり、やる気というか働く気が無いのではないか…。埼玉というのは、そんなに未開の土地なのだろうか。
それでも彼女は妊娠の事実を嬉しそうに話していた。大好きな人の赤ちゃんだから嬉しい、という気持ちが言葉の端々にまで行き渡っていた。受話器が触れる私の耳に染みこむ程に。
彼女は何もわかっていないんだ。そう思った。世の中好きなだけではやっていけないんだぞ、今はよくても絶対この先後悔するぞ、と思った。
私の父は脱サラを経て自営業を始めたが、未だに振るわず、母は父と結婚したことを少なからず後悔している。しかし父を好きだから我慢できるそうだ。それくらいの想いを、彼女はニートくんに抱いているのか。疑問だった。
でも何もわかっていなかったのは、私の方かもしれない。
一度は母親になる決心をした彼女が、生まれてくる子どもの未来を真剣に考えていなかったはずがない。きっとたくさん悩んで考えた末の決断で、全ての不安を受け止めた後だったんだ。私は全てが済んだ後の晴れやかな報告しか聞いていなかった。
おなかの中の赤ちゃんは、おなかの中で死んでしまった。今日彼女は、電話の向こうで泣くのを我慢していたに違いない。
就活、就活で、大切な友達の悩みすら聞いてあげられなかった。
こんな私をとる企業があるのだろうか。SPIの性格テストの項目「人が困っていると助けてあげたくなる。」に堂々とYESと答えていた私を、私は呪いたい。
私の友達の中では一番古い友達である。出会ったのが七歳の時だから、かれこれ15年の付き合いだ。
彼女とは中学校まで一緒でその後別々の高校に進み、私は浪人→大学、彼女は高校卒業→フリーターという別々の人生を歩んでいたけど、ずっと仲良くしてきた。
小学校の時はどちらかの家でファミコン(そうだ、当時はファミコンだった。)をするか漫画を描くかだったけど、今では会うのは必ずといっていいほど飲み屋。
歳をとったものである。
そんな彼女から妊娠の事実を聞かされたのは、つい先月のことだ。相手は埼玉在住の年下クン。高校中退、ギャンブル大好き、タバコ大好きのとんでもない奴だ。三高ではなく、三低である。
そしてそれだけではない。
奴は、無職。
フリーターではない。正真正銘、なにがなんでも、筋金入りの無職である。っていうか、最近大流行中のニートである。
私は妊娠の知らせを受けたとき、軽く目眩を覚えた。
彼女がニートくんと付き合い始めたのは二年半位前で、その当時から私は彼のことが気にくわなかった。誤解されては困るが、私は彼の無職という肩書きがムカつくのではない。無職なのに親の金でパチンコに行ったり、彼女の金でラブホに一週間も泊まり続けたりする腐りきった根性だ。
最初、彼女は「彼、整備士になりたいみたいなの。自動車とかの。でもね、なかなか見つからないんだって。」と言っていた。私は整備士志望ではないのでよく知らないが、ふーんなかなか難しいのかぁ程度に認識していた。
そこで私は「じゃあ整備士の口が見つかるまでコンビニでバイトでもすれば?」と提案したところ、
「面接とか受けてるみたいなんだけど…見つからないみたい。埼玉、田舎だから。」と返された。
しかしね。
付き合い始めてから二年半、ずっと見つからないってのはどういうことなの?二年半コンビニのバイトの面接を受け続けて落ち続けてるとも思えない。これはやはり、やる気というか働く気が無いのではないか…。埼玉というのは、そんなに未開の土地なのだろうか。
それでも彼女は妊娠の事実を嬉しそうに話していた。大好きな人の赤ちゃんだから嬉しい、という気持ちが言葉の端々にまで行き渡っていた。受話器が触れる私の耳に染みこむ程に。
彼女は何もわかっていないんだ。そう思った。世の中好きなだけではやっていけないんだぞ、今はよくても絶対この先後悔するぞ、と思った。
私の父は脱サラを経て自営業を始めたが、未だに振るわず、母は父と結婚したことを少なからず後悔している。しかし父を好きだから我慢できるそうだ。それくらいの想いを、彼女はニートくんに抱いているのか。疑問だった。
でも何もわかっていなかったのは、私の方かもしれない。
一度は母親になる決心をした彼女が、生まれてくる子どもの未来を真剣に考えていなかったはずがない。きっとたくさん悩んで考えた末の決断で、全ての不安を受け止めた後だったんだ。私は全てが済んだ後の晴れやかな報告しか聞いていなかった。
おなかの中の赤ちゃんは、おなかの中で死んでしまった。今日彼女は、電話の向こうで泣くのを我慢していたに違いない。
就活、就活で、大切な友達の悩みすら聞いてあげられなかった。
こんな私をとる企業があるのだろうか。SPIの性格テストの項目「人が困っていると助けてあげたくなる。」に堂々とYESと答えていた私を、私は呪いたい。
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