せつないね

2005年6月10日
『せつないね』というタイトルの漫画を読んだことがある。確か小花美穂の作品だったと思う。

言わずと知れた彼女の代表作は『こどものおもちゃ』(集英社・りぼんマスコットコミックス)だけど、それ以前はこの『せつないね』や『この手をはなさない』など、結構ウルウルのドラマチック作品が多くて、どちらかと言えばこの手の作品の方が私の好みだった。

この『せつないね』が連載されていたのが、あの集英社りぼんなのだからびっくりしてしまう。ほとんどの読者が小学生なのに、せつないね、って!

せつない

どんな意味?

よくわからなかったけれど、ぽそっと「せつないね」と口に出すだけで、自分がトレンディードラマのヒロインになったような気がしたものだ。

今日は彼氏と食事をした。彼はアパレルメーカーに内定を貰い、来春には地方転勤が決まっている。1、2年で帰って来るらしいのだが、それまでは遠距離恋愛になる。

シンハービールを飲みながらした会話。

「俺が遠距離中に浮気したらどうする?」
「うーん…殺す」

その時、彼はなんだかすごく悲しそうな顔をした。私は別に本気で言ったわけではないのに。

「じゃあ、どうにか浮気を阻止する方法はあるかな?もしあるなら言って。頑張って綺麗になるし、遊びに行く時は美味しい料理作れるようになっとくよ。」

「多分無いね。おまえがどんなにいい奴で素敵な女でも、100%阻止する方法は無いよ。」

そんなことは知っている。私は彼をかっこいいと思ってるし大好きなのに、結局ほかの男に惑わされた。だから私が選ぶどの選択肢に従っても、つまり可能な限りの手だてを尽くしても、それとこれとは無関係だということだ。

問題というのは、解決できるうちはまだいい。解決までの方法が思いつくのなら、それをするまでだ。解決策を知っているのに文句を言ってやらないのは、ただの怠慢なのだから。

お母さんに怒られたくなければお片付けをすればいい。大学に入りたいなら勉強すればいい。レギュラーになりたいなら練習すればいい。今まではどんなに辛いことがあっても、解決策が明確な場合がほとんどだったけど、本当に辛いのは、解決しようと努力することよりも、解決策が見つからなくて途方に暮れることだ。

もちろん、可能な限り自分にできる全てをやるべきだけど。でもどんなに努力したところで、それとは無関係に動くのが俗に"運命"と呼ばれるもので、あがいた挙げ句にそれに身を任せるしかないんだとわかってしまったとき、人は「せつない」と思うのではないだろうか。

手元にある辞書を引いてみた。

せつない【切ない】(形容詞)
−自分の置かれた苦しい立場・境遇を打開する道が全く無く、やりきれない気持ち。

言葉の意味を、辞書よりも先に自分で認識できたことは嬉しいけど、漫画を読んで想像していたせつなさは、なんかもっと甘美だったような気がする。

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