揺れ動くその姿が

2005年12月23日
かなりショックな事件が。

厳密な意味でオトナを尊敬するようになったのは、二十歳を過ぎてからだ。なぜ「尊敬」という感情を知るようになったか、そのきっかけのようなものはハッキリわかっていて、あるお姉さんと出会ったからだ。6歳年上の女性である。

周りにろくな大人がいなかったというわけではないのに、私の中で、彼女(Sさん)は誰よりも抜きんでた存在だった。美しく、聡明で、アクティブで、仕事ができて、イエス・ノーをきっぱりと言い、人に媚びない。私がどうしても飛び越えられないハードルを彼女はいつも易々と飛び越えていて、まさに"凛"という言葉が似合う、得難い女性だ。

ただ。

彼女にとっては楽に飛び越えられるハードルでも、どうして私が同じものを飛び越えなきゃいけないと思っていたのだろう。

ノーと言えない日本人代表のような私が、アメリカナイズされたSさんの精神に嘆息して「真似っこしよう!」と思い込む図式は、果たして正しいのだろうか、と。ノーと言わない私は確かに悪い。でも私が簡単にノーと言わないのは、「ノー」という言葉を受けて嫌な気持ちになる人に配慮してのことだ。「今は自分の意見を言わなきゃいけないよなぁ。」というシーンに際してはなるべく言おう、と思って生きているけど、それでも、そういう私(イエス・ノーを言えない私)だってこの世に必要なのではなかろうか。

私はブログを書いているし、ネットが趣味と言えば趣味である。そんな私にも理解できない「趣味」の持ち主は多々いて、たとえば、格闘技観戦なんかが趣味の人の気持ちはさっぱり理解できない。でも「ほう、この人は格闘技を観ることが好きなんだな。」と思うことはできる。それと同じように、「ほう、りんはネット上で日記を書くことが好きなんだな。」と"認識"してもらうことはできるはずだ。たとえ"理解"が及ばなくても。

"認識"は"理解"とは違う。私はカレー屋巡りが趣味(?)の人と付き合っているけど、正直、「そこまでカレーを?」と思う部分はある。でも「ほう、この人はカレーが好きなんだな。」と思うだけで、私も同じようにカレーの奥深さを"理解"しようとはしていない。向こうも"認識"してもらえればそれでよろしいと思っている(ように見える)。どちらにしても、私は「カレーが好きなんておかしい。」とは決して言わない。

世の中には市民権を得にくい領域がたしかに存在していて、たまたまカレーは許容しやすいジャンルだけど、ロリコンを趣味と認識しろ、と言われたらかなり苦しい。うっかり「ノー」と言いそうになる。Sさんにとって、ネットはそういう領域(私にとってのロリコン領域)に近いのだろう。だから"理解"してもらえなくてもいいんだ。ただ、"認識"はしてもらえるに違いないと、私はSさんのパーソナリティに信頼を置いていた。(そもそも人に何かを期待することがおかしいと言われたとしても。)

Sさんは、"理解"はおろか"認識"すらも拒む、といったスタンスで「ノー」と言った。本当は「キモイ」と思っているのに表面上だけで「いいねー。」と言われることを想像すると腹が立つけど、なんでもかんでもイエス・ノーがはっきりしていることが、本当にカッコイイことなの?

どれだけ自分にとって受け入れがたいことでも、まずフラットな視点で考えたい、考えよう、たとえその後に「イエス・ノー」が発生したとしても。という思考は、私の「生き方」
を決定づける芯の部分なんだ。イエスとノーの間で揺れ動く人が苦しんでいることを想像すらせず、「イエス」もしくは「ノー」という言葉で一刀両断する姿こそあるべき姿だとはなっから信じられる人がいるなら、「とてもおめでたい人ね。」と私は言いたい。

Sさんに失望(たとえ一瞬でも)したと同時に、幼かった私が元カレでなく今の恋人を選んだ理由を、今日になって思い出した。

「好きなタイプは?」と今後問われたら、「イエス・ノーの間で揺れ動き、苦しんでいる人です。」と答えようと思う。この世にはたくさんの人がいるなあ、と思うけど、私は、うっかりイエス寄りになったりノー寄りになったりしつつも、いやいや何事も極端はいかんよとたしなめつつ、あー私たちってどっちにもいい顔したがりの八方美人なのかしらと時には悩みつつ、あーでもないこーでもないと言い合いながらイエスとノーの間の抜け道(そんなものは存在しないと言われても)を共に探していけるような人と一緒にいたい。

------------------------------------------------------------------

備忘。

「肉体美化キャンペーン」は、主催者側の諸事情(時期が時期ということもあり、美味しいものを山ほど食べる機会が、ここ一週間目白押しのため)により、お休みすることが決定しました。

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

この日記について

日記内を検索