湾岸ドライバー
2006年1月8日マイ・ラヴァーの運転で初詣に行くことに。
いそいそとおめかしをしながら自宅にて彼を待つ。「6歳も年上のカレシが車でお迎えに来る」っていうと、私の中では、セルシオやセンチュリーに乗っててガムとか噛んでてパンツにチェーン付いてる人が、「よぉ。乗れよ。」って現れるイメージだ。私って不良!すっかり浮かれながら、いつもより多めにグロスを塗る。
でも実際は、日産サニーに乗った人の良さそうなお兄さんが「やあ。おはよう!」とさわやかに現れたので、私は不良じゃないみたい。
私の地元にほど近い有名なお寺で参拝、というのが本日のメインイベント。オプションとして、以前から行こうと言っていた、これも私の地元に近いカレー屋でランチ。さらに美術館に寄ってドイツの現代アートを見ちゃおう、という盛りだくさんなプラン。オプションの方が豪華な気がするのも、普段の彼がカレーにこだわるが故だ。助手席に滑り込んで、ゴーゴーと出発。
到着したカレー屋は、私の通っていた高校のすぐ近く。三年間、店の看板を見続けていたのに、なぜか訪れなかった店。マイ・ラヴァーいわく「かなりハイ・レベルな味。その道(なんの道や)では伝説になっている。」とのこと。まったく知らなかった。自分が入店する日がまさか来ようとは。しかもこの人と訪れることになろうとは。店のウリらしいチキン・カレーを食す。
ヒマラヤ山脈原産の紫岩塩ベイチが入った黄色い水、という怪しげなものが50円で売られていたので、好奇心旺盛なマイ・ラヴァーが注文。ほんのり硫黄の匂いがする。食べ物をこよなく愛す彼が、思わず眉間に皺を寄せるような味。放っておくと残すと思われたので、私が三分の二以上を(無言で)飲み干す。これを世間では愛と呼ぶ。
カレーを堪能後、美術館へ。彼と絵を見るのは二回目。メイン(ドイツ現代画家の個展)以外に常設されている作品は、ルノワールやシャガールなど、有名なものが目立つ。女性を描いた作品の前にて。「人を描いているのに崩れている(デフォルメされている)でしょ?こういう”崩し”は、印象派以前では絶対無いから、タッチで大体の時期がわかるよ。」とのこと。
西欧の作品を見た後に日本画のコーナーへ。400年も昔の屏風絵と、戦後の新しい屏風絵が並べてあり、同じく鳥を描いているのに何かが違う。なぜだろう。またまたマイ・ラヴァーいわく、「日本画というものは、白を描くとき、白を塗るのではなく地の白を残すんだ。白を塗るという発想は西洋から入ってきたから、こっちの現代版ではその手法が取られているんだろう。」とのこと。なるほど、こういう解説をしてくれる人となら、難しい芸術鑑賞も悪くない。
車に乗り込み、いよいよお参りへ。
10円を放り込んで、祈願。「何、お願いしたの?」「内緒!」などと、ベタなバカップルトークを繰り広げたのちに、おみくじを引く。今年は絶対に良い年になる確信があるので、良い結果が出るに違いないと思ったら、案の定、「吉」。草木が春を迎えたように前途有望とのこと。恋愛はこれから上々になるとのことではしゃぎながらマイ・ラヴァーの方を確かめると、「焦ると良くない」と書いてあった。どうか焦らないでいただきたいものだ。
さてさて、これから彼の住む町に戻るわけだが(つまり都心を経由)、ただ戻るだけではつまらないよねということで、東京の夜景を満喫プラン決行。しかもせっかく車があるのだから、夜のレインボーブリッジを走っちゃおうという。
人が大人になったなあと思う瞬間はそれぞれあるだろうが、精神面以外でなら、私は「男性(父親以外)の運転する車に乗る」というのがある種の通過儀礼で、初めてその瞬間に立ち会ったときは、さりげなく興奮したものだ。助手席に乗ることをただ喜んでいたのが当時の私なら、ブレーキランプが照らす男性の横顔を見ながら思いを馳せるだけの余裕があるのが今の私。運転に人柄が表れるとはいうけれど、どれだけ隠そうとしても隠せないものが、ハンドルを握るその人の横顔にも表れる。そして、横顔が格好良い人の横顔は本人のものではなく、助手席に乗ることを許された彼女のものだ。
夜のハイウェイのお供は、クレイジー・ケン・バンド。ムーディなシチュエーションなのに「機内食は〜肉か魚か〜迷う事なく肉を選んだ〜♪」という歌詞のsongを流しちゃう(しかもそれに合わせて歌っちゃう)という、彼の「キザなのにモテ男になりきれない部分」を私は愛しいと思う。さらにレインボーブリッジを目指していたのに、複雑な首都高に翻弄され、いつのまにか大井インターへ。
「レインボーブリッジ、乗れません!」(織田裕二風に。)
ここで諦めないのが、粘着質な私たちである。意地でも乗ってやる!と道路地図を駆使する二人組を乗せて湾岸を彷徨う一台。その時点で優雅なドライブではなくなっているので、もはや何が目的なのかわからないが、どうにかこうにか努力が実り、虹色の橋からお台場の夜景を堪能。レインボーブリッジに乗るのがメインだったので、台場到着後、Uターンで島を後にする。彼がモテない理由が少しわかった。
帰宅後、本日走ったルートを検証。東京の地理にやたら詳しい彼の家で、地図(一人暮らしの家なのに、めちゃめちゃある)を広げて社会科のお勉強。お台場に関して。黒船を撃つために砲台が設置された台場が、六つもあったとは知らなかった。現在は二つ(第六と第三)しか残っていないらしい。池袋が苦手だと私が話したことを彼は覚えていて、その理由(と思われるもの)を教わる。池袋の東口は、戦犯が絞首刑に処せられた巣鴨プリズンや、伝染病患者を収容する被病院や、墓場など、負のイメージを持つ施設がうじゃうじゃあったそうだ。証拠たる文献もあったので読ませてもらう。彼がモテない理由が大分わかった(笑)。
そんなこんなで夜は更けて、二人して大寝坊したという。
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備忘。
●最近笑った台詞シリーズvol.3
「江戸時代の地図、あったかなあ?」
普通は無い。
●本日のBGM。
クレイジー・ケン・バンドの『Soul Punch』。
CKBをしっかり聴くのは、初めて。テイストは大分違うが、氣志團やサンボマスターなどに通じる何かがある。核に、「男の美学」をテーマとした流れがあるからか。個人的に、その流れは嫌いじゃない。
「魂拳」がお気に入り。祭り囃子にも似たリズムと、男を惑わせる女を歌った歌詞(Funkyなお尻をプリプリさせて♪)が心地よい。
オレンジレンジの「ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC」も好きな私は、あることに気付いた。私は、男と女がつかず離れずのアバンチュールをテーマにしたような、セクシーで規則的なノリが好きだ。ズン、ズン、ズン、ちょっとお待ちよ、お嬢さん、みたいな。この手の歌は意外と多い。
いそいそとおめかしをしながら自宅にて彼を待つ。「6歳も年上のカレシが車でお迎えに来る」っていうと、私の中では、セルシオやセンチュリーに乗っててガムとか噛んでてパンツにチェーン付いてる人が、「よぉ。乗れよ。」って現れるイメージだ。私って不良!すっかり浮かれながら、いつもより多めにグロスを塗る。
でも実際は、日産サニーに乗った人の良さそうなお兄さんが「やあ。おはよう!」とさわやかに現れたので、私は不良じゃないみたい。
私の地元にほど近い有名なお寺で参拝、というのが本日のメインイベント。オプションとして、以前から行こうと言っていた、これも私の地元に近いカレー屋でランチ。さらに美術館に寄ってドイツの現代アートを見ちゃおう、という盛りだくさんなプラン。オプションの方が豪華な気がするのも、普段の彼がカレーにこだわるが故だ。助手席に滑り込んで、ゴーゴーと出発。
到着したカレー屋は、私の通っていた高校のすぐ近く。三年間、店の看板を見続けていたのに、なぜか訪れなかった店。マイ・ラヴァーいわく「かなりハイ・レベルな味。その道(なんの道や)では伝説になっている。」とのこと。まったく知らなかった。自分が入店する日がまさか来ようとは。しかもこの人と訪れることになろうとは。店のウリらしいチキン・カレーを食す。
ヒマラヤ山脈原産の紫岩塩ベイチが入った黄色い水、という怪しげなものが50円で売られていたので、好奇心旺盛なマイ・ラヴァーが注文。ほんのり硫黄の匂いがする。食べ物をこよなく愛す彼が、思わず眉間に皺を寄せるような味。放っておくと残すと思われたので、私が三分の二以上を(無言で)飲み干す。これを世間では愛と呼ぶ。
カレーを堪能後、美術館へ。彼と絵を見るのは二回目。メイン(ドイツ現代画家の個展)以外に常設されている作品は、ルノワールやシャガールなど、有名なものが目立つ。女性を描いた作品の前にて。「人を描いているのに崩れている(デフォルメされている)でしょ?こういう”崩し”は、印象派以前では絶対無いから、タッチで大体の時期がわかるよ。」とのこと。
西欧の作品を見た後に日本画のコーナーへ。400年も昔の屏風絵と、戦後の新しい屏風絵が並べてあり、同じく鳥を描いているのに何かが違う。なぜだろう。またまたマイ・ラヴァーいわく、「日本画というものは、白を描くとき、白を塗るのではなく地の白を残すんだ。白を塗るという発想は西洋から入ってきたから、こっちの現代版ではその手法が取られているんだろう。」とのこと。なるほど、こういう解説をしてくれる人となら、難しい芸術鑑賞も悪くない。
車に乗り込み、いよいよお参りへ。
10円を放り込んで、祈願。「何、お願いしたの?」「内緒!」などと、ベタなバカップルトークを繰り広げたのちに、おみくじを引く。今年は絶対に良い年になる確信があるので、良い結果が出るに違いないと思ったら、案の定、「吉」。草木が春を迎えたように前途有望とのこと。恋愛はこれから上々になるとのことではしゃぎながらマイ・ラヴァーの方を確かめると、「焦ると良くない」と書いてあった。どうか焦らないでいただきたいものだ。
さてさて、これから彼の住む町に戻るわけだが(つまり都心を経由)、ただ戻るだけではつまらないよねということで、東京の夜景を満喫プラン決行。しかもせっかく車があるのだから、夜のレインボーブリッジを走っちゃおうという。
人が大人になったなあと思う瞬間はそれぞれあるだろうが、精神面以外でなら、私は「男性(父親以外)の運転する車に乗る」というのがある種の通過儀礼で、初めてその瞬間に立ち会ったときは、さりげなく興奮したものだ。助手席に乗ることをただ喜んでいたのが当時の私なら、ブレーキランプが照らす男性の横顔を見ながら思いを馳せるだけの余裕があるのが今の私。運転に人柄が表れるとはいうけれど、どれだけ隠そうとしても隠せないものが、ハンドルを握るその人の横顔にも表れる。そして、横顔が格好良い人の横顔は本人のものではなく、助手席に乗ることを許された彼女のものだ。
夜のハイウェイのお供は、クレイジー・ケン・バンド。ムーディなシチュエーションなのに「機内食は〜肉か魚か〜迷う事なく肉を選んだ〜♪」という歌詞のsongを流しちゃう(しかもそれに合わせて歌っちゃう)という、彼の「キザなのにモテ男になりきれない部分」を私は愛しいと思う。さらにレインボーブリッジを目指していたのに、複雑な首都高に翻弄され、いつのまにか大井インターへ。
「レインボーブリッジ、乗れません!」(織田裕二風に。)
ここで諦めないのが、粘着質な私たちである。意地でも乗ってやる!と道路地図を駆使する二人組を乗せて湾岸を彷徨う一台。その時点で優雅なドライブではなくなっているので、もはや何が目的なのかわからないが、どうにかこうにか努力が実り、虹色の橋からお台場の夜景を堪能。レインボーブリッジに乗るのがメインだったので、台場到着後、Uターンで島を後にする。彼がモテない理由が少しわかった。
帰宅後、本日走ったルートを検証。東京の地理にやたら詳しい彼の家で、地図(一人暮らしの家なのに、めちゃめちゃある)を広げて社会科のお勉強。お台場に関して。黒船を撃つために砲台が設置された台場が、六つもあったとは知らなかった。現在は二つ(第六と第三)しか残っていないらしい。池袋が苦手だと私が話したことを彼は覚えていて、その理由(と思われるもの)を教わる。池袋の東口は、戦犯が絞首刑に処せられた巣鴨プリズンや、伝染病患者を収容する被病院や、墓場など、負のイメージを持つ施設がうじゃうじゃあったそうだ。証拠たる文献もあったので読ませてもらう。彼がモテない理由が大分わかった(笑)。
そんなこんなで夜は更けて、二人して大寝坊したという。
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備忘。
●最近笑った台詞シリーズvol.3
「江戸時代の地図、あったかなあ?」
普通は無い。
●本日のBGM。
クレイジー・ケン・バンドの『Soul Punch』。
CKBをしっかり聴くのは、初めて。テイストは大分違うが、氣志團やサンボマスターなどに通じる何かがある。核に、「男の美学」をテーマとした流れがあるからか。個人的に、その流れは嫌いじゃない。
「魂拳」がお気に入り。祭り囃子にも似たリズムと、男を惑わせる女を歌った歌詞(Funkyなお尻をプリプリさせて♪)が心地よい。
オレンジレンジの「ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC」も好きな私は、あることに気付いた。私は、男と女がつかず離れずのアバンチュールをテーマにしたような、セクシーで規則的なノリが好きだ。ズン、ズン、ズン、ちょっとお待ちよ、お嬢さん、みたいな。この手の歌は意外と多い。
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