元気でいてくれ
2006年2月10日少々長めの備忘。
バイト先の後輩・Mくんの話。
Mくんは頑張り屋さんだ。まだ10代なのに、高校を卒業してすぐ上京。将来は自分のお店を持つことが夢だそうで、そのためにバイトで経験を積み、少ない時給の中から貯金をして、さらに英会話も習っている。人当たりが良く、礼儀正しい。私が仕事に関してアドバイスすると、「ハイ、ハイ。」と聞く。「これやってもらえる?」と聞くと、機嫌良く「わかりました。」と言う。ただ、彼には相当のコンプレックスと人に言えない苦労があるのだろうな、ということだけは、Mくんが入店した日に既に見当がついていた。本人がそのようなことを口にしたのではなく、彼の風貌から私たちが判断したことだ。
彼は、おそらくあるに違いないコンプレックスのために、人の見えないところでかなりの努力をしているようだった。私たちから常に何かを吸収しようとしているように見えた。そうでもしないと人並みになれない、と思っていたのかもしれない。努力の源泉が何であれ、私はMくんの姿勢を評価している。が、しかし。
随分前の話だけど、私は気づいてしまった。
うちのお店は食品を扱っているので、守らなければいけないスタンダードがある。作り方を間違えてお出ししたら、お客様を騙したことになる。そのスタンダードは厳密で、入れる液体は何ミリリットル、温度は何度から何度以内、というところまで決まっている。が、そうはいっても一日中見張っているわけではないし、ある程度のラインに到達したら完全に放置されるので、商品の品質に責任を持てるのは自分しかいない。お客様が気づかなかったらそれまでだし、自分が罪悪感を感じなければ何も起こらない。
私は見てしまったのだけど、Mくんは、定められた分量をうっかり(たぶん、うっかり)間違えたまま、お客様に商品を手渡した。お客様に「これは○○ですか?」と聞かれて、「ハイ、○○です。」と自信たっぷりに答えていたけど、私は「え、違う!」とすぐに気づいた。なぜなら、たまたま彼の行動の一部始終を見ていたから。お客様に言われて「あ、間違えた。」とMくんは気づいたはず。気づいた時点で謝罪して作り直せばよかったのに、お店が混んでいたからか、Mくんは嘘をついた。
誰しも嘘をつくときは、その嘘がバレないことを前提に嘘をついている。Mくんに「さっきついた嘘、バレてるよ。」と伝えたら、彼はどれだけ恥ずかしい思いをするだろうか。嘘なんて誰でもつくから、とわかっていても、いざ嘘をついたことが公になったら、責められても仕方ない。なぜなら、「嘘をつかない」ことはマナーだから。
このマナーについて面白い例えをした人がいる。誰でも鼻毛はある。伸びる。だから、切る。切るのは、マナーだ。鼻毛を切る姿を人に見せないのも、マナーだ。でも、この例えをした人は、鼻毛が伸びることそれ自体は悪くない、と言った。だから「私は鼻毛なんて切ったことがない。」とわざわざ言う必要も無い。でも、やっぱ、切る姿を意図せずに見せちゃうのは良くないのだ、と。意図せずに、というところが重要。いいか、今から鼻毛を切るぞ、見てろ、と宣言してから切ればまあ良い、と。でも、バレてないと(本人だけが)思ってて実はバレてる、ってのが一番恥ずかしいし、マナー違反だし、避けるべきことだろう、と。
Mくんが私にはバレてないと思ってても実はバレてるように、私が今バレてないと思いこんでいることが、周りの人にとってはお見通しだったりするのかな、と思ったり。
「元気でいてくれ。」と言われて、ハッとしたことがある。鼻毛を切っているとき、つまり、誰にも見られてないだろうしいっか、と完全に思いこんでいるときの私は、無防備に「醜さ」をさらけ出しているときだ。誰もが「醜さ」を持っているとしても、それを隠そうとしていない瞬間だ。だから、「醜さ」に自覚的になれ、自覚するからこそ隠すことができる、その自覚的になろうとする様が「元気である」という状態で、私が周り(Mくん含め)にそれを望むように、周りも私に望んでいるのだろう。「醜さを見せないでくれ。見てもなんとか消化するけど、なるべくなら見ないに超したことはない。」という切実な思いをダイレクトに私に言えなかったからこそ、「元気でいてくれ。」という一見的はずれな言葉に変換されたのかな、と思った。
沈黙は金なり、という言葉の意味について考えている。
そして、もし私が誰かの鼻毛を切っている姿を発見しても本人に伝えずになんとかする方法はないかと、そのことについても考えている。見せないのもマナーだけど、見なかったフリをするのもマナーだと私は思うから。偽善的だと言われても、ね。
------------------------------------------------------------------
10日間ほど、イタリア・フランスへ行ってまいります(卒業旅行)。
●本日新たにゲットした品々。
腹巻きタイプの貴重品入れ
ドライアイ対策の目薬(大量)
コンタクトレンズ洗浄・保存液
スタンドミラー
海外でも使える変圧式ドライヤー
日記帳
みなさま、ごきげんよう。
バイト先の後輩・Mくんの話。
Mくんは頑張り屋さんだ。まだ10代なのに、高校を卒業してすぐ上京。将来は自分のお店を持つことが夢だそうで、そのためにバイトで経験を積み、少ない時給の中から貯金をして、さらに英会話も習っている。人当たりが良く、礼儀正しい。私が仕事に関してアドバイスすると、「ハイ、ハイ。」と聞く。「これやってもらえる?」と聞くと、機嫌良く「わかりました。」と言う。ただ、彼には相当のコンプレックスと人に言えない苦労があるのだろうな、ということだけは、Mくんが入店した日に既に見当がついていた。本人がそのようなことを口にしたのではなく、彼の風貌から私たちが判断したことだ。
彼は、おそらくあるに違いないコンプレックスのために、人の見えないところでかなりの努力をしているようだった。私たちから常に何かを吸収しようとしているように見えた。そうでもしないと人並みになれない、と思っていたのかもしれない。努力の源泉が何であれ、私はMくんの姿勢を評価している。が、しかし。
随分前の話だけど、私は気づいてしまった。
うちのお店は食品を扱っているので、守らなければいけないスタンダードがある。作り方を間違えてお出ししたら、お客様を騙したことになる。そのスタンダードは厳密で、入れる液体は何ミリリットル、温度は何度から何度以内、というところまで決まっている。が、そうはいっても一日中見張っているわけではないし、ある程度のラインに到達したら完全に放置されるので、商品の品質に責任を持てるのは自分しかいない。お客様が気づかなかったらそれまでだし、自分が罪悪感を感じなければ何も起こらない。
私は見てしまったのだけど、Mくんは、定められた分量をうっかり(たぶん、うっかり)間違えたまま、お客様に商品を手渡した。お客様に「これは○○ですか?」と聞かれて、「ハイ、○○です。」と自信たっぷりに答えていたけど、私は「え、違う!」とすぐに気づいた。なぜなら、たまたま彼の行動の一部始終を見ていたから。お客様に言われて「あ、間違えた。」とMくんは気づいたはず。気づいた時点で謝罪して作り直せばよかったのに、お店が混んでいたからか、Mくんは嘘をついた。
誰しも嘘をつくときは、その嘘がバレないことを前提に嘘をついている。Mくんに「さっきついた嘘、バレてるよ。」と伝えたら、彼はどれだけ恥ずかしい思いをするだろうか。嘘なんて誰でもつくから、とわかっていても、いざ嘘をついたことが公になったら、責められても仕方ない。なぜなら、「嘘をつかない」ことはマナーだから。
このマナーについて面白い例えをした人がいる。誰でも鼻毛はある。伸びる。だから、切る。切るのは、マナーだ。鼻毛を切る姿を人に見せないのも、マナーだ。でも、この例えをした人は、鼻毛が伸びることそれ自体は悪くない、と言った。だから「私は鼻毛なんて切ったことがない。」とわざわざ言う必要も無い。でも、やっぱ、切る姿を意図せずに見せちゃうのは良くないのだ、と。意図せずに、というところが重要。いいか、今から鼻毛を切るぞ、見てろ、と宣言してから切ればまあ良い、と。でも、バレてないと(本人だけが)思ってて実はバレてる、ってのが一番恥ずかしいし、マナー違反だし、避けるべきことだろう、と。
Mくんが私にはバレてないと思ってても実はバレてるように、私が今バレてないと思いこんでいることが、周りの人にとってはお見通しだったりするのかな、と思ったり。
「元気でいてくれ。」と言われて、ハッとしたことがある。鼻毛を切っているとき、つまり、誰にも見られてないだろうしいっか、と完全に思いこんでいるときの私は、無防備に「醜さ」をさらけ出しているときだ。誰もが「醜さ」を持っているとしても、それを隠そうとしていない瞬間だ。だから、「醜さ」に自覚的になれ、自覚するからこそ隠すことができる、その自覚的になろうとする様が「元気である」という状態で、私が周り(Mくん含め)にそれを望むように、周りも私に望んでいるのだろう。「醜さを見せないでくれ。見てもなんとか消化するけど、なるべくなら見ないに超したことはない。」という切実な思いをダイレクトに私に言えなかったからこそ、「元気でいてくれ。」という一見的はずれな言葉に変換されたのかな、と思った。
沈黙は金なり、という言葉の意味について考えている。
そして、もし私が誰かの鼻毛を切っている姿を発見しても本人に伝えずになんとかする方法はないかと、そのことについても考えている。見せないのもマナーだけど、見なかったフリをするのもマナーだと私は思うから。偽善的だと言われても、ね。
------------------------------------------------------------------
10日間ほど、イタリア・フランスへ行ってまいります(卒業旅行)。
●本日新たにゲットした品々。
腹巻きタイプの貴重品入れ
ドライアイ対策の目薬(大量)
コンタクトレンズ洗浄・保存液
スタンドミラー
海外でも使える変圧式ドライヤー
日記帳
みなさま、ごきげんよう。
コメント