丸々一日を観光に費やすことができるのは、今日が最後。

まずはとにかくと、メトロを利用してルーヴル美術館へ。ルーヴルは、古代彫刻から19世紀の絵画まで膨大な(およそ30万点)コレクションを誇るフランスの宝石箱だ。残された時間を考えると、オルセー美術館(『泉』、『落ち穂拾い』などを展示)よりはむしろルーヴルだな、という判断による。

インフォメーションでゲットした館内図とMYガイドブックを駆使して、必見作品早回り作戦。館内は3つの翼(なぜ翼?)から成り、それぞれが半地階から3階までの四層構造。地図があってもややこしく、行く先々で現在位置を見失い、警備員に何度も「Could you show me where I am on this map…?」と尋ねることに。

ルーヴルで人並みの感動をした後は、セーヌ川にかかるポン・ヌフを渡り、徒歩でノートルダム寺院へ。ノートルダムとは聖母マリアのことで、見所は豪華なゴシック様式の建築美と、ステンドグラスだそうだ。テンションが徐々に上がるミキティとまゆげ。

それにしても、クリスチャンでもないのにここまで教会美術に興味を持てる彼女らの動機の大元は、一体何だろう。決して非難しているわけではない。というのも、今回の旅で各地の聖堂や寺院や修道院を回って知ったことは、当たり前だが、そこはすべて聖なる場所だということで。ミサが行われてなくても、常に静粛で、荘厳で、犯しがたい気高さに満ちている(それくらいは私にもわかる)。そして、そこに集まるべきは、観光客ではなくむしろ敬虔な信者であろう。私はようやく理解したことがある。神の所在についてだ。この空間に集まる人々は、皆、神は存在すると信じている。仮に神がいると仮定して、誰の目にもわかるようなそれらしい姿で存在を誇示するだろうか。だから、もし本当に神がいるなら、人々の心という、あるんだかないんだかわからないような手探りの中でしか感じられない場所にこそ、神の台座はあるのだと思う。だって、ここにいるクリスチャンの心の中には、確実に神がいるから。

エッフェル塔にて。

先日東京タワーに上ったせいか、実物のエッフェル塔は「あれっ…こんなもん…?」という印象(フランスのみなさん、ごめんなさい)。私、なぜかエッフェル塔を東京タワーのように赤いものだと思っていたのだが、全然違う。むしろ、くすんだ茶色。うーん、まいっか、とにかく写真は撮ろう、ってな具合でパチパチと。そして、実は、実は、本日のメイン・イベント、フランス人のD氏と落ち合う約束が、このエッフェル塔の真下に位置するイエナ橋なのだ!

このD氏。Qooがカナダ留学した際に仲良くなったらしく、その後もメールでやりとりをする仲だったそうな。今回パリに行くよと言ったら、「グレイト!」(と言ったかどうかは知らんが)という流れで会うことになった。寒さにガタガタ震えながらD氏を待っていたのだが、いつまで経っても現れないので公衆電話からケータイにTel。どうも仕事が長引いているらしく、待ち合わせ場所を凱旋門近くのシャンゼリゼ通りに移すことに。

もう六時だ。ただでさえ寒いのに、雨が。まあまあ楽しみにしていた凱旋門とシャンゼリゼ通りだったのに、「オー、シャンゼリーゼー♪」と歌う余裕は一切無く、早く暖かいところへ、と、手近のカフェに駆け込むことに。日本ではなかなか飲む機会の無い濃厚なホット・チョコレートで温まる。そして、ついに、D氏登場。初めてお会いするD氏は日本人女性受けしそうな甘〜いマスクが売りの、なんともハンサムな青年。こりゃ、アカン。日本から持参したお土産を渡し、終始目がハートの一同。こりゃ、四人それぞれの彼氏には決して見せられんぞ(笑)。急遽合流することになったD氏の先輩・J氏も現れ、会話はすべて英語だが和やかな雰囲気に。

私たちは本場フレンチのディナーを予約していたのでここで解散かと思いきや、食事後に再び落ち合おう、夜景の綺麗なサン・ジェルマン地区に連れて行ってやる、と言われ、私の体内のセンサーが「危険!」という信号を出していたにもかかわらず、目がハートの流れでそのような展開に。いいのか!?

夕飯は、オペラ座近くのカジュアルなレストランにて。オードブル、メイン、デザート、という簡単なコース。期待していたほどの味ではなかったが、フランスでフランス料理を食べるという当初の目的が達成できたので、ワレ、マンゾク。しかも本場のワイン(ロゼ)まで堪能できるなんて、まさに最後に相応しい晩餐だ。…と、久しぶりのアルコールですっかりイイ気分になっていたのに、私たちのテーブルを管理していたのが、んもう、これぞステレオタイプの女好きフランス人、という奴で、「ニャ〜オ。」を連発しながら(おまえは猫ひろしか!)まゆげのほっぺを触ったり、ミキティの白魚のような手を叩いたり、と、最初から最後までうるさくて、ゆっくり食事をするどころじゃなかった。しかもチップを手渡したら相当嬉しかったようで、なんと、手にベーゼ(キス)のプレゼント。バカモノ!生まれてからたった一人にしか口づけを許していない私の手を汚すな!

店を出たら、さらに二人の女好きフランス人(D氏とJ氏)が待ち構えており、メトロ駅を複雑に経由して着いたところは、夜景の綺麗な地区というよりむしろ、新宿・歌舞伎町のような装いの一画。案の上、彼らの行きつけらしい飲み屋に案内され、促されるままにアルコールを飲まされることに。「酔ったら絶対マズイ!!」という判断を四人が瞬時に下し、なるべく度数の低いものを頼もうとしたものの、「スペシャル・ティー」があるからそれにしなよ、と言われ、ティーならいっかと注文。届いたのは、ジョッキのビール。どうやら「スペシャル・ティー(特別なお茶)」ではなく、「スペシャルティ(オススメ)」だったようだ。英語が不得手だと人はこういう目に遭うのである。

ビールが飲めないジャパニーズ(私を除く)。終電が迫る時刻。外は雨。右も左もわからない土地。二人の女好きのフランス人男性。これ以上危険な状況はなかなか無い。しかも、夕方は紳士だった二名も徐々に化けの皮が剥がれ始める。そして唯一の頼みの綱だった英語が(私たちよりは)堪能なQooも、D氏の色香に参りっぱなしでもう私ダメ〜ン状態。ここは、長女の腕の見せ所。「We have to go!」と宣言するも、「メトロはまだあるから大丈夫さ!」「ノン!えーと、えーと、オール・ウィー・ハブ・ステディだし、地下鉄の乗り継ぎが上手にできるかわかんないし、とにかく、ウィー・ハフトゥ・ゴーなのデス!」「そうか。じゃあこれだけの酒を全部飲んでからにしろよ。」「えっ!?」という展開に。ふっ。笑っちゃうわね。普段から酒豪に囲まれてもなお素面を保ち続けているワタクシに勝負を挑むおつもり?大和撫子をなめんじゃないわよ。

スイッチON。イッキ、イッキ、りんさん、イッキ。

女衆のジョッキ×4を光速で片づけ、フランス人がビビった隙に(実はジャパニーズもビビってたという事実を後から知った)、「さあ、これで文句無いわね、イッツ・タイム・トゥゴーですわ!」という流れを作り、ついに脱出。しかし、夜はまだまだ終わらない。終電まで余裕があったはずのメトロが運転手のハートアタック(心臓発作)が原因で止まる、という最悪な展開。「タクシーで帰りゃいいさ。」と他人事のように言うフランス人だが、ここにきてさらに最悪な展開に。というのも、パリ観光を始める時点で所持金が尽きていた三名に私が金を貸す、という無理矢理な乗り越え方をしていたゆえ、タクシーに乗れるか乗れないかというレベルの金額しか残っていなかったのだ。崩れ落ちそうになる私の脳裏にハッと浮かんだのは、日本を離れる際にマイ・ラヴァーから手渡された餞別の存在だ。こんなこともあろうかと、イタリアでユーロに換金していたのだ。それが残っている!!

フランスのタクシーは三人(運転手含まず)が定員で、四人の私たちを乗せてくれるドライバーを探すのにも骨が折れたけど、念のためにとD氏とJ氏からも金をむしり取り、これだけの金でなんとか行ってくれ、とフランス人に頼んで交渉してもらう。成功。無事、ホテルへたどり着くことができた。セ・タンクロワイヤーブル(信じられない)!それにしても、むしり取れた金額はわずか7ユーロだし、ビールの代金(6ユーロ×4)も私持ちだし、フランス人は本当にジェントルマンなのか…?という疑問だけが残る。

そんなこんなで。

最後のフランスの夜を彩ったのは、凱旋門の灯りでもなく、美味しいフランス料理でもなく、もちろん口の上手いフランスオトコでもなく。「遠いところからだけど、見守ってるよ。」と言わんばかりに託されたマイ・ラヴァーの愛だった。という、私の旅行記はたとえ恋人と一緒じゃなくても結局ノロケに始まり、ノロケに終わるのでありましたとさ。

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