りん流ユートピア

2006年6月6日
すっぴん&メガネで出勤する火曜日。

(※詳しくは昨日の日記を参照のこと。)

昼休み、同期Kちゃんを交えて井戸端会議。これが給湯室なら完璧だ。「つまりね、私の欲しいものは原理的に得られないのよ。」「どういうこと?」「DTほど魅力的なものはないと思うの。ただ、どれだけ魅力的なDTでも、付き合ったらDTじゃなくなっちゃうじゃない。」「DTはイヤだよ〜。」「私が理想とするのは、いつまでも悶々とした気持ちを忘れない永遠のDTなの。原田宗典のような。」「じゃあ付き合ってもDTのままにしておけばいいわけ?」「いや、至近距離にDT力全開の奴がいたらそれはそれで暑苦しい。」「ということは?」「結論は出ないよ。」「なんしか、DTはイヤだよ〜。」「俺はDTですよ。」「入ってくるな!」と、まったく得るところのない話を延々と。

取引先の返事待ち。退屈だ。人が出払った本社にてパンをかじる。

おいしくない。バカな。たかがパンじゃないか。そういえば、先日ン年振りに行ったカラオケ屋(通っていた高校のすぐそば)の唐揚げの不味さに驚いたが、私はあの日を覚えている。あの日とは高校時代。子どもだましと気付かなかったツマミの諸々が、私はやけに好きだった。大学生になり、ビールも銘柄にこだわらず、たまに連れていかれたオシャレっぽい店の雰囲気だけで満足で、それこそ子どもだましと思われる込み入った名前のカクテルを飲んでいた。口に入ればよかった。卒業を間近に控え、私は飲んだことのなかった酒(日本酒、ワイン、焼酎)を飲むようになり、大人しかいない店に行くようになり、本当に美味しいものを食べる機会ができた。それでも何を食べても美味しくて、自分はグルメじゃないと信じてた。

パンをかじりながらYahoo!ニュースを見る。

逮捕された村上世彰。またか、という感想しかない。グルメだったという堀江貴文のことさえ思い出す。不味いパンを飲み込んだ後、本社に唯一残った先輩のそばでケータイを(こっそり)チェック。忙しい時期が終わったら水族館に行こう、という約束が待ち遠しい。「水族館ってもしかしたら行ったことないかも。」と語る某氏に対して、バカな、と思うも、そういえば私たちはどこに行ってたろう、と目を瞑って考える。ディズニーランドも、ヒルズも、お台場も、汐留も、ザ・デートスポットがことごとく苦手な彼女を持ったある人(やはり大変なのかな)は、それでも私を楽しませようと休日の度に靴を履いていたような。

思い出すには時間がかかった。たとえば私たちは新宿御苑に行ったことがあるけど、思い出せる御苑の景色は遙か遠い。が、強烈に覚えていることがある。その強烈な何かは、たとえ御苑に戻らずとも、こうして職場にいても、リアルな感動とともに甦る。食べ物だってそう。味覚は徐々に当時の興奮を忘れ、それでも私は未だ忘れない強烈な何かゆえにまたあの店に行きたいと思う。そうか。私は、色々な場所に行きつつも、色々なものを食べつつも、こうして職場にいても思い出せるあの世界を愛でていたんだ、と気付く。

目を瞑って「もし水族館に行ったら」と考える。イルカがいて、ラッコがいて、クラゲがいて、でもそういった具体的な何かより、私はまたあの世界を欲すだろう。そして「もっと色々話して!」とせがむだろう。あれもこれもと消費者の需要に応えるための日々の仕事の合間に、美味しいものや行きたい場所を夢想しつつ、私はこれさえあればいい、と思う。これさえあればいい、という思いが(もしかしたら)人より強い私は、本気で消費者のことを考えるべきメーカーの仕事は不向きかも。それでもやるよ。仕事だから。「今日は何もできないからたまには早く帰りな。」と私を追い出そうとする先輩に挨拶をして、私は今日も帰りの電車で目を瞑る。

これさえあればいい。が、これ以外のものを「不必要だ」と切り捨てるのは人でなしと思う。だから、これ以外のものに皆と一緒に一瞬は興じつつ、誰も想像できないはずのこの世界を個々人が持っていれば、という理想郷を思う。そうなれば犯罪も無くなるのにね、と週刊誌の広告を見ながら考える。

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