6月9日 AM0:45 〜 AM9:40 の記録。

※前回までのあらすじ
(Jねーさんとついつい話し込んでしまった私は終電を逃し、大都会・東京で路頭に迷う。明日も仕事。しかも雨。さてどうしたものか。)

仕事中とはわかっていたけど、マイ・ラヴァーに電話。「どうしたの?」「終電逃しちゃった…。」「えー、じゃあ鍵取りにおいで。会社の下まで一瞬出ていくから。」「うん、ごめん。」という展開でタクシーに乗る。都心で先に車を降りた私は、そのまま自宅に向かうJねーさんに手を振って彼を待つ。うー私が終電を逃すなんてええええええという気持ちが膨らみ過ぎてすっかり自己嫌悪に陥った頃、マイ・ラヴァー到着、鍵をゲット。タクシーの運ちゃんに「ここをこう行って、ああ行って、あのあたりまで。」と行き先指定までしていただき、一足どころか二足も三足も早く彼のマンションへ。

人の鍵を使って人の部屋に侵入。

「脱ぎっぱなしのアレが放置してあるけどお気になさらず!」「新しいタオルが洗濯物の山の中にあるからシャワーとか勝手に使って!」「ベッドと壁の間にリモコンがあるから除湿するといいよ!」と、私が来ることなどまったく予想してなかっただろう彼から、仕事中にもかかわらず何度もメールを受け取る。脱ぎっぱなしのアレをくすくすと片付け、うっかり彼の使いかけのタオルを使い、リモコンを発見できなかったので換気扇を回す。もう2時になる。

昨日(もう昨日になる)のJねーさんとの逢瀬で思いついたことをさらに煮詰める。

流しそうめんのようにわらわらとぶら下がった色とりどりのネクタイ群、スーツを着る用が減った彼にはこんなに要らないだろう。用途じゃない。そして目を凝らす。「物」(もともとあったものじゃなくて、人間が生産したもの)には用途があって、そこだけに注目すると甚だ現代的かつ理路整然とした状態になる。私が(たとえば)彼のネクタイを見るとき、明らかに用途は問題としていない。私は作家でもなんでもないけど、書きたくなるとき、それはこういうときなんだなあ、と。

ネクタイはネクタイ、それを首に巻く彼を好きなのはその通り。ただ、首に巻く本人がいない今だって、私は(用途を欠いた単なるものとしての)ネクタイから何かを抽出する。用途を孕んだ「物」で占められた世界とは、私たちの周りにいつでも存在するリアルワールド。「物」が「物」としてではなく漠然とした「もの」として私に迫るとき、その漠然とした何かを私なりの形にしたくて文章を書く。大抵は書き表せないが。ネクタイがただそこにある、それのいったい何が嬉しいのか、すべては謎だ。私がセクシャルだと感じる多くのことはマイ・ラヴァーが本質的に持っており、彼の持ち物にも(リアルワールドの裏で)かたちを変えて宿る。持ち物に宿ったその正体を、かつての私は"形跡"と書いた。女は形跡に恋をする、とも。

早朝6時過ぎ、家主帰宅。

あと3時間、あと3時間以内に私は会社に行かなくちゃ。リアルワールドには、彼と私の会社があって、サラリーマンとしての彼がいて、OLとしての私がいる。そもそも会社なんて存在しなかったあるがままの世界にワープすると、私は文章を書いているときと似た高揚感を覚え、同時に心から安らぐ。その世界では私は社会的身分をまったく持たないただの女で、目を瞑った状態では体温と呼吸音のみになった彼も社会的身分をまったく持たないただの男だ。

AM9:40 今日もリアルに働きます。

コメント

初夏
初夏
2006年6月12日2:44

超ウケる。笑

初夏
初夏
2006年6月12日2:46

↑間違えたぁー!!焦
ってわけで本当のところにもっかいコメントします笑。

りん
りん
2006年6月13日1:11

>初夏ちゃん
わはは、お気になさらず(笑)。私も前にやったよね??

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