秘書の戯れ言

2006年8月17日
たまには仕事の話を。

言語学、歴史学、政治学など、すっかり「学問」として定着している分野については、学ぼうとする意欲の有無が何より重要だろうと思う。その気になれば(学校で)教えを乞うこともできるし、関連書物も数多い。言語も、歴史も、政治も、なべて中心にあるのは普遍的な人間の活動で、突き詰めれば「人間学」と呼べるらしい。「人間学」は学際的要素が強い言葉だけど、要は、どんな学問もまず人間ありきという点で共通してるということらしい、です(たぶん)。

166におよぶ文化圏で行われた調査の結果、人類学者は147の文化の中に「恋愛」の証拠を見つけているらしい。古代シュメールの街ウルクには、シュメールの女王が羊飼いの少年に送った楔形文字の詩が残されており、「わが最愛の人、わが瞳のよろこびよ」という言葉に託された情熱が、五千年という歳月を経て、現代に生きる私の元にも届けられる。古代ギリシア人は恋愛を「神々の狂乱」と呼んだそうな。激情はときに大の大人さえも狂わせ、天に舞い上がらせたかと思えば次の瞬間に地に突き落とす。人の生にここまで多大な影響を与える点では、著名な思想家や、有力な政治家だってなかなかかなわないと思う。

人の生にかくも影響を与えるというのに、未だメジャーな学問たりえない「恋愛学」「結婚学」に関して、だから私たちは自力で学ぶしかなく。特定の誰かの姿を人混みに見つけるだけで きゅん とするこのわけわからんパワーを解明することもできないまま、私たちは自らのからだを献体するがごとく恋に落ちちゃう。成分不明の薬を「えーい!」と飲むのと同じくらい無鉄砲な行為なのに、皆、一回しかない自らの生を潔く捧げちゃう。潔く恋に落ちたあとにふと立ち止まり、じっと相手と自分を見返せば、偉大なるソクラテスの手にさえ余った「恋愛学」「結婚学」が、ロマンスから生じる甘美さと学問としての凛々しさの双方を保持して人に迫るのかもしれないね。

おっと、仕事の話でした。

上記に述べた通り、「恋愛・結婚とはなんぞや?」とは、未だに人類共通のテーマたる。私は、日々の仕事の合間に、「恋愛とは…こういうものか!?」とか「そうかッ、結婚とはもしや!?」とか、何かと答えめいたものを発見できたような気になることもあるんだけど、たとえばレンブラントが絵の具をどう混ぜどう塗ったかについて正確に知っていたとしても作品に対して抱く畏怖や驚嘆の程度があまり変わらないように、ただ「わー!すっごい!」と思うことには変わりない。驚く気持ちを失わないように、それだけはいつまでも忘れずにいたいと思う(余談だが、この業界に所属し続けてもなおこの新鮮な驚きを保持することは、警察官が正義感を忘れないのと同じくらい重要なことだと個人的には思っているんだよね)。

さて、本日のインスピレーション。

「結婚」にまつわる雑誌はたくさんあるけど、特にゼク●ィのような"情報誌"に偏ることは、結婚に関する細分化された情報をカスタマイズして完成させるという意味で、「結婚」が「最終目標」になりかねない。たとえば2006年7月発売のCREAのように、「結婚」を人間活動の一環として相対的に捉えるためのソースとなり得る本も加えれば、「結婚」が「最終目標」ではなく、ほかにもたくさん存在する「人生において大切なこと」のひとつになるだろう予感がする。「結婚」はある意味"絶対"だけど、"絶対"に頼りすぎて我を見失うと途端に何かが瓦解するというパラドックスがあるようだ。

なにも「結婚」にかぎらない。以前(2006年6月29日)、私は、相対ではなく絶対の中に生きよ、というメッセージめいた日記を書いたことがあるのでそれと矛盾するとは思うのだけど、「目標を常に置いてそれまではがんばる」という姿勢には、きっと、危険が伴う。というのも、土日を楽しみに五日間労働するとたしかに週末を迎えた瞬間は嬉しいけど、月曜の朝にはぽっかりと穴が開いたような虚しさが湧いちゃうから。ご褒美めいたものを念頭に置くことは、精神を健全に保つ意味でも重要だと思うけど、完全な"絶対"ではなく、少しばかりの相対を散りばめた余裕を残しておかないと、リスクヘッジとしてはイマイチ、だよね。

雑誌をチェックするたびに思うこと。

「結婚」が「最終目標」と化すべく仕向ければ、新郎新婦に気合いが入り、それだけ各社の利益が上がる(と思う)ので、それは、まあ、よろしいことなんですが、(プロフェッショナルとしては)ちと不安です。半世紀前の倍になったといわれる情報が私たちにたくさんの選択肢を与え、現代の多くの若者がこの豊かすぎる社会に生きながらどうしようもない喪失感を同時に抱いているように、唯一の「最終目標」となった「結婚」が結果的に世のお嬢さんに与える(結婚後の)喪失感を思うと…

結論は急がんとこっと。なんしか、仕事しながら考えるべきこととしては申し分ないテーマです。

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