循環

2006年9月1日
オフィスを移ることになりました。

生まれて初めて参加した合コンもたしかここだったなあ、と。大学一年生だった。あの日、私は(ほぼ)初めてこの街に降りたって、道幅の広さと人のあまりの多さに閉口した。わたしの服はダサくないかしらということばかり気になって、鏡ばかり見ていた。郊外から出てきたばかりの私には、当時、この街がものすごく刺激的だった。この街で飲むというだけで、少し大人になった気がしてた。

新しい職場は、私と同じように異動してきたばかりの人、他社からヘッドハントされた人、などなど、わたしたちどういう因果でここに、という「一期一会」を感じられる場所。ここで新規事業を興す。

帰る途中、ちょっと遠回りして、昔バイトしてた店に顔を出しました。当時のメンバーもまだたくさん残ってて、店内もあまり変わってなかった。変わったのは私だった。ついさっきまですまし声で電話に出たりしてたのに、この店に来たら「ちょっとアンタたち、がんばってんのォ!?」と姉さん気取り。そのギャップが自分で可笑しくて。

私がついていくことになった専務(とてもダンディで穏やか)はおっしゃいました。「りんさん、私がいなくなっても平気なように私は頑張るんです」と。「いつまでも同じ人間がリーダーじゃ組織は駄目なんです」と。専務がそんなことを言うなんて、専属秘書の私は少し悲しい。

「んもうこの子たちわあ。あたしがいなきゃだめなんだからこの子たちわあ」と育てた(つもりの)バイトの後輩たちが、今は当時の私より昇格してて。店は滞りなく回ってて。

秋になって冬が近づくとこの街は華やかになる。舞い戻ったこの街のイルミネーションを見るのは今年で五回目になるけど、当時のままのものはほとんど残ってない。岩井克人は、著書『貨幣論』の中で「貨幣が貨幣であるためには、それは人間による日々の売り買いによってよって、たえず貨幣として確認され、たえず貨幣として更新されていかなければならない。」と語る。先日買って部屋に飾ったガーベラも、水を頻繁に変えてやらないとすぐに茎が腐ってしまう。

唐突な気がするけど、変化を恐れず、当時の街にいながら、ここではないどこかへ、わたしも。


仕事にも精が出る 金曜の午後
タクシーもすぐつかまる 飛び乗る 目指すは君

風にまたぎ月へ登り
僕の席は君の隣り
ふいに我に返りクラリ
春の夜の夢のごとし

Traveling 君を Traveling 乗せて
アスファルトを照らすよ
Traveling どこへ Traveling 行くの?
遠くなら何処へでも

Traveling 胸を Traveling 寄せて
いつもより目立っちゃおう
Traveling ここは Traveling いやよ
目的地はまだだよ

(宇多田ヒカル・「Traveling」より)

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