23歳、エトランジェ

2006年9月30日
「市場調査」という名目で百貨店に繰り出す。

山ほどカタログを抱えて帰社し、今度は楽天ランキング調査。1位の商品はなぜ売れているんだろうと考える。場がネットだけにバナー広告効果かいなと訝って、主要ポータルサイトを回覧。我が社がまずは乗り出す「ネット」という販路でどれくらい武装すればよいのか、と。敵(ライバル社の戦略)を知らずしてバズーカ砲を用意したら相手が丸腰だった、というオチはコスト的にも避けたい、と社長。

一昨日の木曜夜、32歳の兄さんに中華とお酒をご馳走になった。

錦糸町駅改札で待ち合わせてしばらく歩く。案内された店のロフトのような二階で、創作チャイナ(?)。透明な丸テーブル。泡立つ黄金色の液体。外されたネクタイ。

兄さんの第一印象は「時事ネタに精通してて文学にも詳しいさらに仕事もがんばってるでもモテない(笑)」というものだった。はじめて会った日の兄さんは地下のワインバーのカウンターに腰掛けて、馴染みだというその店のマスターに慣れた作法で私たちの料理をオーダーしてた。あの日の兄さんは薄いピンクのワイシャツを着てた。グラスでハートランドビールを飲んだ後、カリフォルニア産のワインを飲んでいた。

どこかでラインを引いていた。私は兄さんの携わる領域とほとんど関わりのない分野で内定を貰い、大学を卒業する前もした後も、兄さんと兄さんの仲良しの姉さんが「仕事」について熱く語るとき、異国の王子様お姫様のストーリーを聞いている気がしてて。私は本国(ってなんや)でこっちを専門にやっていくんにゃ最後に愛は勝つ!と随分長いあいだ思っていたけど、異動して聞くことになった専務の言葉を思い出す。「いやいや、りんさんのフィールドは広いですよ」と。兄さんが立っていると思われたのは地平線上だったけど、もしかして私が今立っているこの場所はあの日見えた地平線じゃないかと思う。兄さんが店員に「赤ワインを」と頼んだ後に「私も同じものを」と続けて言う。

「もう一軒行きたい店がありまして」と誘う兄さんのうしろから店の階段を降りる。兄さんの背広が上下に揺れる。私のイヤリングもきっと揺れている。仕事の後に社会人の男性に案内されて食事をしてお手洗いから帰ってきたらチェックの手続きが為されてる、気付けばこれがはじめてだったというのにきっと大過なく過ごせている自分が少しこわくて嬉しくて、足元の地平線の存在をたしかに感じてた。

「我らが社長の最大の不幸は、総務ひいてはコンサルの領域で有能な人物に出会えなかったことでしょう。」と専務。見解を受け、「その件について社長はお気付きでらっしゃるとお見受けしますが、いったい今後どうされるおつもりでしょう?」と問うたところ、「あなたには重すぎて言えませんが、いつか知ることとなるでしょう。」という返事が導くさらに遠い地平線へ、当時と同じように異国への憧憬を持ったまま、旅立つ準備を今日もここから。

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