先週までの慌ただしさが嘘のよう。

「あなたはさわらないでください」「わたしがやりますからいいです」「言われたことだけやってください」という専務(直属の上司)の言葉が、電話を切ったあともこだまする。丁寧で穏やかすぎる口調。そういえば専務は私と話すとき、いつも右手で口元をそっと隠してた。

仕事の合間に生臭い話を聞く。最初からひとりだった専務は部門のエキスパート。ひとりでやってた仕事をふたり(専務と私)でわけた。主幹事業とは畑が違うこの事業は専務の「人脈」で誕生したから、専務以外にご存知ない。束縛を嫌う専務は、たとえ社長と話すときでさえ、右手で口元をそっと隠してた。

嫌いだったお局(6月20日の日記参照)とお昼を食べる。

「困ったことがあったらすぐに駆け込んできなさいって前から言ってるでしょ」と、男勝りに煙草をふかす。灰を落とす仕草も6月と変わりない。「あのねえ、売上とか会社の利益より社員を守る方が優先なのよ」という、おそらく社長から受け継がれているにちがいないDNA。四川風麻婆豆腐が辛いフリをしてハンカチを使うしかなくて。

お局のねえさん(と呼ぶにはかなり苦しい)は、専務が嫌いな「束縛」を司る。束縛が多すぎて「本業」に身が入らないとわめいた専務は、いつもねえさんを非難した。ねえさんの仕事っぷりに点数をつけるなら、美しいビジネスの理論から少々逸脱するところも(たぶん)あって。「利益より社員を守る方が優先」という理念がその典型。「人員」ではなく「社員」を手に入れるには時間がかかるが、美しいビジネスの理論はおそらく"無時間モデル"のなかにある。静止した概念の世界。

「なぜ売れているのだろう」と考えて専務からマーケティングを学び、静止したビジネスの理論は私のなかでキラキラと輝いた。月初だから総務は慌ただしいゆえにねえさんは終日オフィスに籠もるでしょう、という読みを専務はするのかな、と。実際はといえば、美しいビジネスの理論から逸脱した行為(私のためにのんびりゴハン)がここにある。どう考えても最善ではない事業展開をするように見えた社長を私が咎めたとき、専務は「社長の夢だから」と切り捨てた。たえず時間が流れ続ける世界で、夢と夢がぶつかり合い、人(法人含む)の行為は予想がつかなくて。それでも利益を求めてる。絶対に静止することない世界で生きるしかない私たちサラリーマンが今日も明日も闘うなら、ときに危うい場所へ導く「夢」を武器に、ときに涙が出るほど自分勝手な「愛情」を盾にするのかな、と。

今日も帰りにTSUTAYAに寄って、歌声はあまり好きじゃない広末涼子を借りる。帰りの道すがら、とってもとってもとってもとってもとってもとってもだーいすーきよー、あいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあいあーいしーてるーと口ずさむ。広末のPR担当もまさか予想できまい理由による。

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