仕事中に交通事故を起こし、あるときは同僚に殺されかけた。それでも「明日も会社に行こう」と思えた理由がある。どうしても社会人になりたかった。どうしても社会人になりたかった記憶が遠くなるにはまだ早すぎて、自分が未だ若輩であるというその事実から早く抜け出したかったのに、ここにきて「あなたは本当にまっさらな白布のようね」と涙ぐむお局を見て、今はむしろ事実にすがりたい。私は未だ純粋だろうか、と。
前線は東京を直撃し、窓の外は嵐のよう。人が出払ったオフィスの留守番電話に残された「過労と診断されたので休みます」というメッセージ。必ず定時以内に直帰して翌日は眼下にクマどころか腹一杯おいしいものを食べたような顔で出てくる男が「過労」という言葉を軽々しく口に出すことが許せなくて許せなくて許せなくて、受話器を壁に叩きつけたくて。彼は嘘をつく相手を間違えた。
一緒に外を歩くたびに「あそこの会社からも声かけられてるんですよ」と。自社を省みていつも「こんなちっぽけな会社のくせに」と。彼が自身の"人脈"のみで作りあげた商品。口癖は「私、○○が好きなんですよ」と。「こんな成功しやすい商材はないですよ」と。潜り込んだ会社の資本で成功しやすい商材を製造し、限られた販路で利潤を吸い上げ尽くしたらあとは消えるまで。彼が会社に潜りこんで一年、どれだけバックマージンを得たのだろう。
一ヶ月以上前、「りんは不器用だね」と未明に言われてちっともわからず「私って不器用?」と問うたら「すごくすごく不器用だよ…」と呻いた人がいて、「でも、俺は、りんが不器用じゃなくなったらいやなんだ」と付け加えられた。「まっさらな白布のよう」と私を慈しむお局も同じ気持ちだろうか、と。紹介料を得ていたにちがいない大学時代の友達にエステに連れ込まれ、うっかり判を押し、生まれてはじめてクーリングオフをした。原宿でスカウトされ、危うく「素人ナンパ物」に出演するところだった。オシャレで背が高くて口が上手い男とエッチして、危うく傷つくところだった。そんな私の経歴が増えていく。それでも私は不器用でいいのか、と。「この会社は他社と比較して、裏表のないわかりやすい人たちが揃っていますよね」とまっすぐ私の目を見て専務は言う。
「あんたは放っておけない!」と常に過保護な両親が疎ましい。「素敵な人がいてね」もしくは「素敵なものがあってね」とすぐに興奮する私に水を差すように、「あんたがどれだけ失敗しても滅茶苦茶な目に遭っても最後の最後に頼りになるのはおとうさんとおかあさんだけなんだからね」と言われ続けて24年。いつか両親がいなくなり自分の足で立ち飄々と生きていくのだとしても、白布のままでは成し遂げられないだろうか、と。白布の上に真に美しいものだけを置き、死ぬまで「素敵!」と言い続けられないだろうか、と。
配属初日の専務のメール↓
大人の世界(社会)とは、虚と実が混ざりあった世界です。
わかりやすく言えば、表もあれば裏もある世界です。
これからりんさんが生きていかれる中で、今のりんさんの価値観で感じたことを、
10年後の自分の価値観で擦り合わせてみると面白いですよ。
観察眼は情報発信のひとつの手段です。
これから大切なのは、受信した情報を正しく分析する力ですね。
私がなぜこのようなことをりんさんに申し上げるかといえば、
私の経験則で恐縮ですが、りんさんはサラリーマンとして大成功するか
大失敗するかタイプに近いような気がします。
私がりんさんと接する時間は何年もないかもしれません。
私で役に立つと思うことは記憶に残してください。
私の失敗も反面教師としてお役に立つことでしょう。
「専務の下に配属されて本当に嬉しいんです」と鼻息荒かった私を毎日相手にして、彼は何を思っていたのだろうかと。
前線は東京を直撃し、窓の外は嵐のよう。人が出払ったオフィスの留守番電話に残された「過労と診断されたので休みます」というメッセージ。必ず定時以内に直帰して翌日は眼下にクマどころか腹一杯おいしいものを食べたような顔で出てくる男が「過労」という言葉を軽々しく口に出すことが許せなくて許せなくて許せなくて、受話器を壁に叩きつけたくて。彼は嘘をつく相手を間違えた。
一緒に外を歩くたびに「あそこの会社からも声かけられてるんですよ」と。自社を省みていつも「こんなちっぽけな会社のくせに」と。彼が自身の"人脈"のみで作りあげた商品。口癖は「私、○○が好きなんですよ」と。「こんな成功しやすい商材はないですよ」と。潜り込んだ会社の資本で成功しやすい商材を製造し、限られた販路で利潤を吸い上げ尽くしたらあとは消えるまで。彼が会社に潜りこんで一年、どれだけバックマージンを得たのだろう。
一ヶ月以上前、「りんは不器用だね」と未明に言われてちっともわからず「私って不器用?」と問うたら「すごくすごく不器用だよ…」と呻いた人がいて、「でも、俺は、りんが不器用じゃなくなったらいやなんだ」と付け加えられた。「まっさらな白布のよう」と私を慈しむお局も同じ気持ちだろうか、と。紹介料を得ていたにちがいない大学時代の友達にエステに連れ込まれ、うっかり判を押し、生まれてはじめてクーリングオフをした。原宿でスカウトされ、危うく「素人ナンパ物」に出演するところだった。オシャレで背が高くて口が上手い男とエッチして、危うく傷つくところだった。そんな私の経歴が増えていく。それでも私は不器用でいいのか、と。「この会社は他社と比較して、裏表のないわかりやすい人たちが揃っていますよね」とまっすぐ私の目を見て専務は言う。
「あんたは放っておけない!」と常に過保護な両親が疎ましい。「素敵な人がいてね」もしくは「素敵なものがあってね」とすぐに興奮する私に水を差すように、「あんたがどれだけ失敗しても滅茶苦茶な目に遭っても最後の最後に頼りになるのはおとうさんとおかあさんだけなんだからね」と言われ続けて24年。いつか両親がいなくなり自分の足で立ち飄々と生きていくのだとしても、白布のままでは成し遂げられないだろうか、と。白布の上に真に美しいものだけを置き、死ぬまで「素敵!」と言い続けられないだろうか、と。
配属初日の専務のメール↓
大人の世界(社会)とは、虚と実が混ざりあった世界です。
わかりやすく言えば、表もあれば裏もある世界です。
これからりんさんが生きていかれる中で、今のりんさんの価値観で感じたことを、
10年後の自分の価値観で擦り合わせてみると面白いですよ。
観察眼は情報発信のひとつの手段です。
これから大切なのは、受信した情報を正しく分析する力ですね。
私がなぜこのようなことをりんさんに申し上げるかといえば、
私の経験則で恐縮ですが、りんさんはサラリーマンとして大成功するか
大失敗するかタイプに近いような気がします。
私がりんさんと接する時間は何年もないかもしれません。
私で役に立つと思うことは記憶に残してください。
私の失敗も反面教師としてお役に立つことでしょう。
「専務の下に配属されて本当に嬉しいんです」と鼻息荒かった私を毎日相手にして、彼は何を思っていたのだろうかと。
コメント
とか言うのは置いといて、実際、今この瞬間生きてる時点で人間なんて、イデア的な意味では純粋であるわけがないですよ。もし俺は純粋だ!と言い張る人がいるなら、それは単に自分の都合のいいように切って張った記憶を眺めてるだけの人でしょう。
ウィトゲンシュタインが言うように、言葉には何の意味もない。客観的な裏づけがないのだから。アナタとワタシでは純粋の示す意味も違う。
だから純粋なんて言葉に囚われずに、りんさんらしく生きたらいいんじゃないかなと思います。社会人である自分と、自分である自分、どっちか一つを選ぶ必要なんて、ないですよきっと。
ありがとうございます。幸いながら、なにも恐いことはありゃしないんです。文章にすると恐いようなことを合法的に行った人がいて、そんな人を目の当たりにしたんです。
なんていうか、私は会社休みたくないな、と思いました。本当にヤバイ状況になったときの周囲への説得力も失うし、人に「逃げられて」本当にものすごく無責任だなと思ったんです。とはいえ自分の身も大切なので、レッドアイさんの言うように追いつめないようにバランスだけはとっていかなければ、と思ってます。
どうもありがとうございます。嬉しかったです。
どうもありがとう。読んでくれてたんだね。
私も、自分が純粋だと思いこむことほど傲慢な勘違いはないと思うけど、どーるくんが言うようにイデア的な意味での「純粋」に到達できないことがそもそもの前提であるなら、どうあがいてもどうせ無理なんだから、ずっとは無理でもときどきで純粋であろうと努力すること、それが私たちにできる唯一のことじゃないかと。そんな気もするんですね。そういう私の一面を見た人はそこを掬い出してくれているのではないかと。
何かを信じて裏切られたと思うことがそもそも被害者意識丸出しだろう…とは思うけど、この日記を書いた日はちょっと弱っておりまして。でも、どーるくんのコメント、嬉しかったよ。私らしく、うん、そうだよね。